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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
ひとり日本にのこる自分の生活の変化ということの実体もよくわからなかった。伸子は冷静なような、また、非常に動揺しているような気持で、夜の庭の夏草が室内から溢れる皎々とした電燈に照し出されて、不自然にくっきりと粉っぽいように見えているのを眺めた。
十九
東京の夏は、いつも七月二十日前後からひとしお暑気を加えて来る。その夏は近年にない酷暑ということで、新聞の写真版もあらそって涼味をもとめていた。
外国行の話をしてから、素子はその暑気の中を精力的に動いた。そして、二三日うちに京都へ出発するところまで用事を運んだ。
「やれ、やれ、これであした日本橋へ行けばもうすっかりすんだ!」
日中は乾くまでが暑くるしいと、夜あらったどっさりの髪を肩にひろげて、素子はうまそうに煙草をすった。日傘をささない素子の顔は日にやけて、湯上りの鼻のみねが、うす光りした。
あくる朝、伸子はいつものとおり、素子よりひとあしおくれて起床した。そして、蚊帳をたたみ、床をあげてから、茶の間のそとの縁側を通って風呂場へゆこうとした。すると、
「ぶこちゃん」
妙にしんとした声で、素子がちゃぶ台の前からよんだ。