轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

生きるために生きることを拒絶しない人々は、それを拒絶して翔び去った友人の最後のかどでを、真情の手に舁いで送っている。伸子は、黒と白と金色の悲しく美しい「オルドス伯の埋葬」というグレコの絵を思いおこした。

こらえていて涙が汗にかわって全身からにじみでたあとのようにぐったりして、伸子は谷中の式場から動坂のうちへまわった。

「大層な疲れようだこと」

かり着の浴衣にくつろいでも、口がきけないようにして冷たいものばかりのんでいる伸子をよこから眺めながら、多計代がいった。そして、つつみきれない好奇心で、遠慮がちに、

「――お葬式、どうだったい?」

ときいた。伸子は、すぐ答えられなかった。そういう風にきいたり、話したりするにふさわしい感情が伸子のなかになかった。忘れたころになって伸子は、ひとりごとのようにいった。

「相川良之介というひとが、芸術家だったことだけはたしかだわ……ああいう風に友達からおくられることができるんですもの……」

伸子の記憶のなかに、軽井沢で死んだ武島裕吉の葬儀の日の光景がよみがえった。式は、麹町辺にあったそのひとの大きい邸宅で行われた。鯨幕をはりめぐらした玄関から、故人の柩の前まで、更にそこから出口まで、白布がしきつめられ、柩の横に、礼装の親族が立ち並んでいた。