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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

ずっとあとから、多計代からそのことをきかされた。

「わたしは保さんのような生れつきでないし、一緒にすんでいるのでもないから、心配したって保さんの役には立たないのかもしれないわ。でもね、……保さん、あなた本当に何でも話し合える友達、あるんでしょう?」

「沖本なんか、今でも時々会っているし、いろいろ話す」

「ああいう人じゃなくさ!」

伸子は、もどかしげに力をこめて、大柄だがなで肩で、筋肉のやわらかい保の温和な顔を見た。沖本は中学時代の友人で、地方に病院長をしている父親は上京するごとに、保を招いて息子と帝国ホテルのグリルで御馳走をした。佐々夫婦と自分たち夫婦とが二人の息子を挾んで会食したりした。そういう雰囲気の交際であった。

「高等学校って、わたしがよけいそう思うのかもしれないけれど、一生つき合うようなしっかりした親友が出来る時代なんじゃないの」

「…………」

保は、こまかいふきでものが少しある生え際を、まともに電燈に照らされながら、大きい絣の膝をゆすっていたが、やがて、

「僕のまわりにいる連中って、どうしてあんなに議論のための議論みたいなことばかりやっているのか、僕全く不思議だ」