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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

「面白い?」

「おもしろい」

素子ははっきりうなずいた。

「ずるいなあ」

伸子はほんとにそう思って云った。

「いつ買ったのよ」

「二三日前さ」

二三日前と云えば、白い浴衣の男が不意に柘榴の樹かげから縁先にあらわれた日の、すぐあとのことである。素子は、また顎をなで上げるようにしながら、

「北條一雄の本ていうのも見ましたがね、どうもこっちの方がいいらしいから、こっちにした」

「ずるいなあ」

伸子はまたそう云った。

「わたしが、とじこもって、あれこれ考えてるまに……」

「いくらわたしだって、まさか、何一つしらないで行くわけにも行かないじゃないか、ぶこちゃんだって買えばいいのさ、どっさり積んであるよ、東京堂に」

ウメ子が、その言葉に注意をひかれていくらかためらいながら、

「――どっかへいらっしゃるんですか?」

ときいた。素子は、

「ああ、」

と、自分で自分の言葉に不意うちをくったように少しまごついた。

「まだはっきりきまったことじゃないんですがね――わたしもどうせ一生ロシア文学の翻訳で暮すんなら、思いきってひとつソヴェトへ行ってきたいと思って……」

「まあ!」

ウメ子は、まぶたの上にさっと艶を浮べて、