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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

「あの人は、人生そのものが、あんな風なのさ」

そのとき、玄関で、

「ごめんなさい」

という男の声がした。

伸子が出て行ってみると、たたきのところに立っているのは男と女と、二人の客であった。

「やあ……」

テニス帽をぬぐ竹村英三に、伸子は、

「……御一緒?」

ときいた。女の客はその問いにあわてたように、

「いいえ。あの蕗子さんがあがっておりましょうか」

自分が竹村英三のつれでないことを明瞭にした。その声をききつけて、

「おそかったのね」

蕗子が出て来た。

「おお、おや。じゃあダブったんですね。門のところでおちあったんだけれど……」

そう云って改めて若い女客を見た竹村に、素子が座敷から、

「竹村さん、一寸八畳の方にあがっていてくれませんか」

と声をかけた。

蕗子の友達は、就職の相談に来たのであった。吉川という、その瘠せぎすの娘は、蕗子と同じ学校の英文科を去年卒業していた。

「それゃ心がけておかないもんでもないけれど……」

素子は、上まぶたをひきそばめるような視線になって、じっと吉川の、きちんと白衿を合わせているあたりを見た。

「あんたも、やっぱり家はいいんでしょう?」

「……生活にこまることはございませんけれど……」