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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
「みんなとてもいい出来だった。カンタローブの網目なんか、とてもこまかくて」
保は子供らしく、
「メロンやりたいなあ」
そういって、和毛のかげの濃い口元をほころばした。
どっちみち、保は愉快そうになっている。伸子はそのことで満足した。けれど、別の思いもあった。伸子としては、自分に分相応の環境の中から、せめて保がよろこぶかと思って竹村の温室見物を思いついて誘った。保は、誘いをうけとり、見に来たけれども、それより前伸子の知らないうちに父とドライヴをかねて大磯へ行き、日本にいくつと数えるような贅沢な温室を見て来ていた。
このことは伸子に、盆暮れや誕生日に、母におくりものをするときの心持と似かよった心もちをおこさせた。かさばって、ぎょうぎょうしいものばかり貰いつけた生活で、伸子がおくるささやかな品は、多計代に品物としての刺戟を与えないようだった。両親の銀婚式のとき、伸子としては奮発して、小さい銀の花瓶をもって行った。そのときはよろこんで、箱の上に出して眺めたが、十日ほどたって行ったときには、もうその辺に見えなかった。
「花瓶どこへ行ったの?」
伸子がきくと、多計代は、