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ふたつのぶんがくろん

二つの文学論

平林 初之輔

「東京朝日新聞」1929(昭和4)年1月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,666 字 · 4 页

青空文庫

二月号の時評等の対立によりてこの同じ問題が再燃しようとしている。

私自身はプロレタリア文学は、暗かるべしとする現実派の主張、現実を現実として描くことに重きを置く主張は、ややもすれば「貧困の中にただ貧困をのみ見る」態度に堕する危険性を十分もっていると同時に、あまりに明るすぎる、「ピクニック」小説にもやはりそれ自身の危険があるので、生田長江氏の批評は、一般論としてでなく、特定の二三の作品について加えられた批評としての限りにおいては正しいものをもっていたと考えている。

また同じ書物の中のエミール・ゾラを評した章の中に、「詩的創造の二元性」に関する議論がある。そしてその中で「闘争者のみであるような詩人は正にそのゆえにこそ、もはや詩人ではなくなるであろう。……個々の芸術家を取って考える場合には、これら二つの要素(闘争者と芸術家)が彼らの天びんや、彼らが生活した歴史的環境の異なるに従って、種々様々な組み合わせをとるのであるから、したがって、ある時には闘争者としての性質が表面に浮かんで芸術家がその姿を没し、ある時には芸術家としての性質が表面に浮かんで競争者がその姿を没する」