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ふたりいるとき

二人いるとき

宮本 百合子

「新女苑」1938(昭和13)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,672 字 · 18 页

青空文庫

小枝子はそのことをさしているのであった。

一仕事すんだくつろぎで番茶をのんでいると小枝子が、

「きょうの『女の言葉』よみました?」

と二人に向ってきいた。

「朝日のでしょう? まだ見なかったわ、何か出ているの?」

「ある女のひとが投書しているんですけれどね、電車のなかで私たちみたいな女がドストイェフスキーみたいな厚いむずかしいものなんかをよんでいるのを見かけるが、果して彼女達はどこまで理解してよんでいるのだろう、って云うんです。電車の中なんかでは軽い雑誌とかパンフレットでもよむべきだって、その女のひとは云うんです」

「何てわからないんだろう! そのひと」多喜子が、怒ったように小枝子に振向いて訊いた。

「生意気だって云うの?」

「さあ。――とにかく机に向わなけりゃドストイェフスキーなんぞわからないって云うんでしょう」

「変なのね、私たち誰だって電車の中でよんだ学課以外の本のおかげで、どうやら読書力がついたんだわ」

「そのひとには、往復の電車で本をよめるというのがどんなに勤めているもののよろこびと慰安だか分ってないんですのね、きっと」

いくらか難詰の声で小枝子が云った。