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ふたりのおとうとたちへのたより

二人の弟たちへのたより

宮本 百合子

「輝ク部隊」第一輯、1940(昭和15)年1月1日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,652 字 · 6 页

青空文庫

垣根越しにお隣の柿の木の色づいた葉が見えますし、市中の並木の銀杏も大分黄色くなりました。プラタナスの枯葉がきょうのすこし強い風にふきおとされて雨にぬれた歩道に散っていました。日比谷公園では例年のとおり菊花大会をやっています。用事で公園をいそぎ足にぬけていたら、いかにも菊作りしそうな小商人風の小父さんが、ピンと折れ目のついた羽織に爪皮のかかった下駄ばきで、菊花大会会場と立札の立っている方の小道へ歩いて行きました。

先達って靖国神社のお祭りの時は、二万人ほどの人々が上京したそうでした。電車の中にも省線のなかにも胸にしるしをつけた老若男女の姿があって、古風な紋付羽織を着たお父さんにつれられて、赤ちゃんを抱いた黒紋付の若い女のひとの姿などは、特に人々の眼をひきました。夜は、星空をサーチライトの光が青白く、幅ひろく動いていました。今年の春のお祭りには、お母さんも丁度終りの日から御上京でしたから、お詣りもなさり、いろいろ珍しいものも御覧になりました。あのときは日光見物にいらした汽車のなかにも胸にしるしをつけた人たちが、どっさりのり合わせました。中禅寺湖のまわりの群集も大部分がそういう人たちでした。