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ふたりのもうじん
二人の盲人
平林 初之輔
「祖国 第三巻第一二号」1930(昭和5)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,366 字 · 13 页
眼が見えないために、心がひがんだのだと、思われたくなかったからだ。だが、何にも言わないということは、ますます彼の猜疑心を尖らした。暗の中に、怪しい幻覚が、つぎからつぎへと果てしなく起こって、彼を責めさいなんだ。幻覚はだんだんと現実性を帯びてきた。彼の嫉妬は、彼の家へしげしげ出入りする藤木に集中された。
一体、藤木はなぜこんなにしょっちゅう家へ来るんだろう? 彼は俺の親友だからじゃないか、だが、俺の方では彼の家へめったに行ったことはないのに、彼の方からばかりどうしてやってくるんだろう? 俺は家を持っているのに、彼は下宿住まいの独身者だからじゃないか、独身者――この言葉に彼は慄え上がった。
彼はいつでも平気な顔をしていた。すくなくも平気な顔をしていようとつとめていた。心の中では、居ても立ってもいられない思いをしていても、顔ではげらげら笑っていることもあった。
千鶴子は、どんな眼をして藤木を見ているんだろう? 俺が何にも知らないと思って、舌を出しておりはしないだろうか? 千鶴子の指は、藤木の指にさわっていはしないだろうか? 彼女の腕は、彼の首に巻きついていはしないだろうか? そして――