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ふたりのもうじん
二人の盲人
平林 初之輔
「祖国 第三巻第一二号」1930(昭和5)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,366 字 · 13 页
何もかも知ってるんだぞ、ということをどうにかして相手に知らせないではいられないような気が彼にはした。
それでいて、彼には何も言うことができなかった。知らずにいて笑われることもつらかったが、まるで根も葉もないことを言いだして笑われるのは、なおさらつらかった。
――ああ俺は、一生この苦しみをしょっていなければならないのだろうか。そして、誰にもそれをうちあけることはできないんだろうか?
この悩みぬいている玄石の心の上へ、都市計画の進行は、もう一つの苦しみを積ねた。工事はだんだん進行して、彼はもう住み馴れた、彼の眼の記憶に残っているただ一つの世界から、立ち退かねばならない日が迫ってきた。人夫のかけ声は、彼の世界を葬う挽歌のようにひびいた。
玄石の神経は、ますます尖ってきた。彼の心理状態は、ますます変調を呈してきた。全世界が彼には意地の悪い敵のように思われてきた。二十年も前に、機能をやめてしまった乳灰色の彼の眼は、毎日のように、天を仰いで、無気味な呪いを発散するのだった。
十一月の夜は、冷え冷えと水気を含んで、冷たかった。喘息病みの玄石が、肉体的に苦しむのはこうした夜だった。