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にじゅういち

二十一

坂口 安吾

「現代文学 第六巻第九号」1943(昭和18)年8月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,877 字 · 21 页

青空文庫

面会室は広い講堂で、その隅ッコに二人差向い、横に看護婦が控えておる。看護人はみんな気違い上りで、いずれも目付が尋常でなく、何を言いかけても返事もせず、顔色一つ動かしたためしがない。糞マジメで、横柄で、威張り返って、いつ横からポカリと僕を殴るか分らぬような油断のならぬ面魂だ。この看護人は毎日必ずバイブルを片手にぶらさげておった。僕達も仏教のことばかり喋っていたが、話の種がつき、話の途中にタメ息がもれるぐらい、僕はもう明日からは断々乎として訪問を止そうと思う。重苦しくて、頭が破れそうである。ところが辰夫は規定の面会時間が終って別れる時に僕の手を握り、明日も来てくれたまえね。君の訪ねてくれるのだけが生き甲斐なのだから、と云って泣きだすものだから、僕も之にはタマげてしまって訪問を止すということが出来なかった。ところへ世はままならぬもので、病院の方では僕の毎日の訪問が殊勝だというわけで、三十分の面会時間を一時間に延してくれたのである。僕も心中暗涙を流して、この調子ではオレも愈※(二の字点、1-2-22)精神病院だと絶望した程であった。尤も、僕の友愛精神に感激して、受付の看護婦が大変僕に好意を示し、僕の姿を認めるとニコリと笑って立上ってハイと云って奥へ知らせに駈けこんで行く。