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にじゅうさんばんち
二十三番地
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,579 字 · 27 页
実際上手下手は抜きにして殆ど家並にその家人の趣味を代表した音が響いて居るので、孝ちゃんの家でもいつの間にか、昔流行った手風琴を鳴らし始めた。
どっか恐ろしくのぽーんとした大口を開いた様な音からして、あんまりいい感じは与えない上に、その主があの親父さんだと云うのだから又いい笑種にされてしまった。
一つの電気の下に集まって、毛脛をあぐらかいて、骨ごつな指を、ギゴチなく一イ、フウ、三イ、とたどらせて行く父親をかこむ子供達が、その強張った指と、時々思い出した様に、ジーブッ、ブーブーと響く音とから、大奇籍でも現れ出そうな眼差しで、二つならべた膝に両手を突張ってかしこまって居る。
その様子を想像するさえ可笑しいのを、弟が、身振り口真似で云ってきかせるのだから笑わずには居られない。
私共だって、一段上の趣味の高い完全な人から見ればそりゃあ又可笑しい事だらけだろうけれ共、何から何まで吊合わない、まるで糸の工合の悪い操り人形の様な事々を見せられると、
あれがよくまあ平気で居られる。
と思わないわけには行かない。
まるで、風土文物の異った封建時代の王国の様に、両家の子供をのぞいた外の者は、垣根一重を永劫崩れる事のない城壁の様にたのんで居ると云う風であった。