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にじゅうさんばんち

二十三番地

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,579 字 · 27 页

青空文庫

何とか怒鳴って奥さんが女中の髪の毛をむしると女中は歯をむいて奥さんの手と云わず顔と云わずバリバリ、バリバリと引っ掻く。

髪が解けてずった前髪からはモジャモジャな心が喰み出て居るし引きずって居る帯に足を取られては俵の様になって二人ともころがる。

四五度引っくり返っては起きなおり起きなおりして居る内に二人とも疲れ切ってしまってペタッと座ったまんま今度は、もう車夫の口論みたいな悪体の云い合いが始まった。

「馬鹿。

間抜け。

は通り越して仕舞って聞くにしのびない様な事を云っては時々思い出した様に打ったり引っかいたりして居たが到々奥さんが泣き声で、

「馬鹿、間抜け、おたんちん。

さっさと出て行け。

どんなにあやまったって置いてやるもんか。

さあ、

さ、さっさと出て御行きってば。

と云うと、女中は手放しでオイオイ泣きながら、

「出て行くともね、

手、手をつついて居て下さいったって誰が居てやるもんか。

馬鹿馬鹿しい。

此処ば、ばかりにおててんとうさまが照るんじゃあるまいし。

覚えてろ。

と云うなり奥さんを小突いて何か荷物でもまとめるつもりか向うの方へ行くと、奥さんは奥さんでヒョロヒョロしながら、