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はたちのエチュード

二十歳のエチュード

原口 統三

原口統三『二十歳のエチュード』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二十歳のエチュード、初期詩篇。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,578 字 · 125 页

青空文庫

そして、もし、鋭い聴覚を備えた魂なら、小石の落ちた瞬間の水の下に、思いがけないある微かな、けれども確かな反響を聴きとるであろう。

幾度びか、僕の独り寝の夜の枕べに訪れて来たマルセル・プルウストのやさしい声が、今日この明るい十月の空の下で、あらゆる物の、ものかげに隠れては、僕を呼んでいる。

窓外を吹きすぎてゆく微風に、あそこの森の上に休んでいる日光に、このひっそりとした小屋の空気に、時おりきこえて来るだれかの跫音に、そうしてこのエチュードを書いているペンの静かな響きに、僕はこれらの事物に秘められた、幼年時と少年時の印象を幾つでも指摘できるだろう。

*28

O saisons, ※(サーカムフレックスアクセント付きO小文字) ch※(サーカムフレックスアクセント付きA小文字)teaux !

このごろ、ランボオのこの詩を誦する時、決まって脳裡に浮かんでくる、もう一つの「城」の姿はこうだ。

鮒ずしや彦根の城に雲かかる

――蕪村――

僕の幼い魂が綴った城の形はどうだったろう。

…………………………

夜明けの海はまだ暗く

夢のなかに 幻の城は聳えていた

…………………………