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にごうごしゃくにかんするあいこくてきこうさつ

二合五勺に関する愛国的考察

坂口 安吾

「女性改造 第二巻第二号」1947(昭和22)年2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,935 字 · 16 页

青空文庫

そればかりではない。私は今もあいにく生きているゆえに天下に稀れなぐうたらものであるけれども、三四年前戦地にあれば殉国の愛国者でありえたかも知れぬ。いな、必ずありえたはずである。私は今朝の新聞に、カラフトの郵便局の九人の女事務員が、ソビエト軍の攻げきに電信事務を死守し、いよいよ砲弾が四辺に落下しはじめたとき、つぎつぎに服毒しておのおのの部署に倒れていったという帰還者の報告を読んだ。もしも殉国の九人の彼女らが今日もなお生きていたなら、今日なにものとなっているか、その想像を怖れる必要はないのだ。人間はそういうものだ。歴史的美談を怖れる必要もなく、また、われわれの現実のぐうたらを怖れる必要もない。すべてはおなじもの、人間、たゞ、それだけなのである。

だから私は近ごろでは、もう切支丹の殉教の気魄などにはいっこうにおどろかず、善人だの忠臣だのにおどろかず、あべこべにたいへんな鼻息で、ときには御機嫌のあまり、『日本の悲惨なる敗北と、愛国者坂口安吾氏の偉大なる戦記』などゝいう一大叙事詩をものしてやろうかなどゝ途方もない料簡を起したりする。

算術の達人があらわれて、浦上切支丹の三合と、私の二合一勺との歴史的価値の差異軽重について意外な算式と答を見つけだしても、私はいっこうに悪びれないのは、私は算術の公式にない詭弁の心得