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にじゅうしんぞう

二重心臓

夢野 久作

「オール読物」1935(昭和10)年9、10、11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,188 字 · 129 页

青空文庫

来ると同時に署長殿からモウ帰っても宜しいと云われたんで、実は面喰ったまま貴方に従いて来たんですが」

「見せてやろうか……現場を……」

「ええ。どうぞ……」

「絶対に喋舌っちゃイカンよ。誰にも……」

「ハイ……大丈夫です」

「よけいな見込を立てて勝手な行動を執るのも禁物だよ」

「……ハイ……要するに知らん顔しておればいいのでしょう」

「……ウン……新米の連中は警察が永年鍛え上げて来た捜索の手順やコツを知らないもんだから、愚にも付かん理屈一点張りで行こうとしたり、盲目滅法にアガキ廻って却ってブチコワシをやったりするもんじゃよ。こっちへ来てみたまえ。ドウセイ退屈じゃからボンヤリしとったて詰まらん。将来の参考に見せてやろう」

「ありがとう御座います」

二人は丸腰のまま応接間をソッと出て、直ぐ隣室になっている廊下の突当りの轟氏の居室に這入った。流石に豪華なもので東と南に向った二方窓、二方壁の十坪ばかりの部屋に、建物の外観に相応しい弧型マホガニーの事務机、新型木製卓上電話、海岸傘型電気スタンド、木枠正方型巻上大時計、未来派裸体巨人像の額縁、絹紐煽風機、壁の中に嵌め込まれている木彫寝台の白麻垂幕なぞが重なり合って並んでいるほかに、綺麗に拭き込んだ分厚いフリント硝子の窓から千万無数に重なり合った樫の青葉が午後の日ざしをマトモに受けてギラギラ