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にせんどうか

二銭銅貨

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1923(大正12)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,143 字 · 34 页

青空文庫

「君、この、僕の机の上に二銭銅貨をのせて置いたのは君だろう。あれは、どこから持って来たのだ」

「アア、俺だよ。さっき煙草を買ったおつりさ」

「どこの煙草屋だ」

「飯屋の隣の、あの婆さんのいる不景気なうちさ」

「フーム、そうか」

と、どういう訳か、松村はひどく考え込んだのである。そして、尚も執拗にその二銭銅貨について尋ねるのであった。

「君、その時、君が煙草を買った時だ、誰か外にお客はいなかったかい」

「確か、いなかった様だ。そうだ。いる筈がない。その時あの婆さんは居眠りをしていたんだ」

この答を聞いて、松村は何か安心した様子であった。

「だが、あの煙草屋には、あの婆さんの外に、どんな連中がいるんだろう。君は知らないかい」

「俺は、あの婆さんとは仲よしなんだ。あの不景気な仏頂面が、俺のアブノーマルな嗜好に適したという訳でね。だから、俺は相当あの煙草屋については詳しいんだ。あそこには婆さんの外に、婆さんよりはもっと不景気な爺さんがいる切りだ。併し君はそんなことを聞いてどうしようというのだ。どうかしたんじゃないかい」

「マアいい。一寸訳があるんだ。ところで君が詳しいというのなら、も少しあの煙草屋のことを話さないか」