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にせんどうか

二銭銅貨

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1923(大正12)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,143 字 · 34 页

青空文庫

今日はこの両区を廻って、それで目的を果さなかったら、もう愈々絶望だと思った刑事は、富鬮の当り番号を読む時の様な、楽しみとも恐れともつかぬ感情を以て、テクテク歩いていた。時々交番の前で立止っては、巡査に煙草店の所在を聞訊しながら、テクテクと歩いていた。刑事の頭の中は FIGARO. FIGARO. FIGARO. と埃及煙草の名前で一杯になっていた。

ところが、牛込の神楽坂に一軒ある煙草店を尋ねる積りで、飯田橋の電車停留所から神楽坂下へ向って、あの大通りを歩いている時であった。刑事は、一軒の旅館の前で、フト立止ったのである。というのは、その旅館の前の、下水の蓋を兼ねた、御影石の敷石の上に、余程注意深い人でなければ、眼にとまらない様な、一つの煙草の吸殻が落ちていた。そして、何んと、それが刑事の探し廻っていた所の埃及煙草と同じものであったのである。

さて、この一つの煙草の吸殻から足がついて、さしもの紳士盗賊も遂に獄裡の人となったのであるが、その煙草の吸殻から盗賊逮捕までの径路に一寸探偵小説じみた興味があるので、当時のある新聞には、続き物になって、その時の何某刑事の手柄話が載せられた程であるが――この私の記述も、実はその新聞記事に拠ったものである――私は茲には、先を急ぐ為に、極く簡単に結論丈けしかお話している