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ごじゅうねんだいのぶんがくとそこにあるもんだい

五〇年代の文学とそこにある問題

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十三巻」新日本出版社、1979(昭和54)年11月20日初版発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,472 字 · 50 页

青空文庫

“Life is such a thing”という言葉がある。ふち飾りである文学が、人類の歴史の進歩に大きく作用する力はなかった。十九世紀のイギリスのロマンティシズムがレルモントフに影響し、サッカレーやディケンズのリアリスムがトルストイなどに作用したにしても、その結果あらわれたロシアの六〇年代の小説と評論は、それが本来の人生の問題につき入っていたからこそ世界精神につよい響をつたえた。戦前、ヴァレリーの「ドガに就て」を訳して、名訳といわれた吉田健一という名を思いおこすと、こんにちの「英国の文学」だの、父親の代弁として、ユーモアのないところに思想はなく、だから文学はないという風なくちのききかたも、何となく中間小説作家流の本来の人生の姿を語っているようでもある。

英文学者の中野好夫が、英国の文学は、人生のふち飾りなりの論に一言も交えず私小説反対に話の糸をつないでいるのは遺憾である。中野好夫は、牢獄も死も覚悟して、「意見と発表の自由に対する権利」をふくむ「人間として基本的なものだけは守りとおす決意をもって」いるのだから、社会的現象である文学の話で、意見をあらわしていいと思う。