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ごえもんとしんざ
五右衛門と新左
国枝 史郎
「大衆文芸 第一巻第一号」1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,405 字 · 21 页
「これは、よく気が付いた。百座の茶、湯で満腹だ。かるがると香煎を出したのは、言語道断云うばかりもない。……名は何んというな、其方の名は?」
「無徳道人石川五右衛門。京師の浪人にございます」
「おおそうか、見覚え置く」
で、秀吉は帰館した。
×
伏見城内奥御殿。――
秀吉は飽気に取られていた。
淀君は今にも泣き出しそうであった。
小供の秀頼は這い廻わっていた。
侍女達はウロウロまごついていた。
一体何事が起こったのであろう?
大閤殿下の衣裳の襟が小柄で縫われていたのであった。
驚き恐れるのは当然であった。衣裳の襟を縫ったのである。胸を刺そうと思ったら、胸を刺すことさえ出来たろう。或は胸を刺そうとして、故意と襟を縫ったのかも知れない。
「謀反人がいる! 謀反人がいる!」
表も裏も騒ぎ出した。
けっきょく石川五右衛門という、京師の浪人に疑がかかった。
「それ召捕れ」ということになった。
秀吉の威光で探がすことであった。苦もなく五右衛門は召捕られた。
とりあえず長束正家が、取調役を命ぜられた。
「衣裳の襟を縫いましたは、いかにも私でございます。あまり縫いよく見えましたので。