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ごがつのことば

五月のことば

宮本 百合子

不詳、1950(昭和25)年4月執筆

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,196 字 · 3 页

青空文庫

世界平和のために戦争挑発とたたかい、戦争に誘いそれを暗示する思想と言論のカナライゼーションに抗してわれわれ自身を恥辱から救おうとする決意と行動は、こんにち、フランスの抵抗(レジスタンス)をまねる範囲をぬけている。一九五〇年は、日本の理性が試練される年である。このきびしくて人間らしい美しい事実はすでにわれわれの前にあらわれている。

河盛好蔵がこんにちのジャーナリズムの有様を「小説病時代」と云った。そしてひろい同感をひきおこしている。巨大資本にしたがえられた商業ジャーナリズム・商品文学の氾濫を批判してすべての作家たちと読者とは、「小説病」は防がれ治癒されなければならないと考えている。そのための必要な文学行動はとりもなおさずジャーナリズムを支配しようとしているのと本質においてはひとしい巨大資本による挑発とたたかって理性を防衛する行動であるという実質を理解して来ている。生物学者である天皇が細菌戦に特別命令を与えたという事実が明らかになったことは、あらゆる人を深く考えさせる。その沈潜するこころもちをまぎらすように、わやわやとした声でかつて軍部に扈従して政治や文学を語った作家が、こんどは、軍事基地施設を拒むことは出来ないという吉田首相をとりまいて文学・政治を談じている。