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こうび

交尾

梶井 基次郎

「作品」1931(昭和6)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,765 字 · 12 页

青空文庫

それを見ていると私は息が詰って来るような気がした。と、その途端露路のあちらの端から夜警の杖の音が急に露路へ響いて来た。

私はいつもこの夜警が廻って来ると家のなかへはいってしまうことにしていた。夜中おそく物干しへ出ている姿などを私は見られたくなかった。もっとも物干しの一方の方へ寄っていれば見られないで済むのであるが、雨戸が開いている、それを見て大きい声を立てて注意をされたりするとなおのこと不名誉なので、彼がやって来ると匆々家のなかへはいってしまうのである。しかし今夜は私は猫がどうするか見届けたい気持でわざと物干しへ身体を突き出していることにきめてしまった。夜警はだんだん近づいて来る。猫は相変わらず抱き合ったまま少しも動こうとしない。この互いに絡み合っている二匹の白猫は私をして肆な男女の痴態を幻想させる。それから涯しのない快楽を私は抽き出すことが出来る。……

夜警はだんだん近づいて来た。この夜警は昼は葬儀屋をやっている、なんとも云えない陰気な感じのする男である。私は彼が近づいて来るにつれて、彼がこの猫を見てどんな態度に出るか、興味を起して来た。彼はやっともうあと二間ほどのところではじめてそれに気がついたらしく、立ち留った。