轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きょうらくじん

享楽人

和辻 哲郎

「人間」1921(大正10)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,551 字 · 10 页

青空文庫

彼はかつて老いたる偏盲に嗟嘆させた、「いやしかし俺は自然の美しさに見とれていてはならぬ。いかな時といえども俺はただ俺の考察の対象としてよりほかに外象をながめてはならないのだ」。さよう、それが木下の享楽の一つの特徴である。彼は白墨で線を画して、その中で美を享楽する。その享楽は実によく行き届いている。が、その線の外に出ることを彼は不思議に恐ろしがるのである。

享楽人の第二の特性として、自分は味わう力の豊富なことをあげた。享楽人が、「味わうこと」を生活原理とする以上は、味わう能力の貧弱は畢竟人としての貧弱である。が、総じて一つの類型たり得るためには、彼は人として豊富でなくてはならぬ。すなわち享楽人はその享楽において広汎かつ強大な能力を持たなくてはならぬ。

享楽の対象は自然と人生の一切である。従って享楽はどの隅にもあり得る。しかし我々は金をためること、肉欲にふけることを無上の悦楽とする「高利貸的人間」が、広汎な享楽の力を持つとは思わない。むしろ彼らは貪欲と肉欲とのゆえに、自然と人生との限りなき価値に対して盲目なのである。彼らが一つの古雅な壺を見る。その形と色と触感との不思議な美しさは彼らには無関係である。