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きょうかのこむすめどうじょうじ

京鹿子娘道成寺

酒井 嘉七

「探偵春秋 第二巻第六号」春秋社、1937(昭和12)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,841 字 · 49 页

青空文庫

が、この一点に留意して、仔細に点検するとき、その古代味に、一抹の不自然さが漂う。――かくの如き疑問及び古典的ともいうべき取材にも拘らず、記述方法に、幾分の近代的感覚が察知しられること――その上、故意になされたと推定し得るほどにも、明白な時代錯誤場所錯誤、及びある程度の矛盾が、敢てなされていること、等を合せ考えるとき、この書物それ自体が、ある意味で、探偵小説味を有しているのではあるまいか、とも感じられる。――即ち、大正、または、昭和年間の、好事家探偵小説作家が、彼のものせる作品の発表にあたり、かくの如き「古書」の形態を装い、同好者の何人かに入手されんことを、密かに、望んでいた……と。

筆者は、右の事情を前書きすることに依って、この「娘道成寺殺人事件」の紹介を終り、姓名不詳の作者が希望していたであろう通りに、その全文を探偵小説愛好者諸氏の御批判に捧げる。

|○|

わたくしが、あの興行を、河原崎座へ見物に参りましたのは、もとより、歌舞伎芝居が好きであり、

瀬川菊之丞

芳澤いろは

嵐雛助

瀬川吉次

名見崎東三郎

岩井半四郎

と申しますように、ずらりと並んだ、江戸名代役者のお芝居を、のがしたくはなかったからに相違ございませんが、それにいたしましても、中幕狂言の京鹿子娘道成寺――あの地をなさいました、お師匠の三味線