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きょうかのこむすめどうじょうじ
京鹿子娘道成寺
酒井 嘉七
「探偵春秋 第二巻第六号」春秋社、1937(昭和12)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,841 字 · 49 页
こうした訳でございますから、私が、あすこに頑張っておりました以上、一座の方以外には、誰も、小屋の中、または、楽屋の中へはいられた方は、決して、ある筈がございません。これは、私の白髪首にかけましても、きっぱりと、申上げることが出来るのでございます。あすこから、お這入りになりました方々の順序まで、私はよく憶えております。それ以外には、ほんに、猫の子一匹も通りませぬ。
あの入口をはいりますと、ちょうど、舞台の裏になるのでございまして、私のいるそばに、すぐと、二階へ通じる階段がございます。この梯子段を昇り切ると、ずっと、廊下になっておりまして、その両側に楽屋部屋が並んでいるのでございます。片側は小屋の表の方向にございますが、廊下をへだてた、その反対がわは、裏手にそっておりまして、窓からは、いまも申しました裏通を見下すようになっているのでございます。この方の側に、杵屋新次師匠と、一のお弟子さまの新三郎さまのお部屋が並んでいたのでございます。それがために、楽屋口から、はいった者が無くとも、この方々のお部屋の窓から、誰か忍び入ったのではあるまいか、とお上の方々も、お考えになったのでございますが、もし、そうとすれば、梯子のようなものでも、使用いたしませねば、絶対に不可能でございますし、そうした物を使わずに、窓のそばに近