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きょうかのこむすめどうじょうじ
京鹿子娘道成寺
酒井 嘉七
「探偵春秋 第二巻第六号」春秋社、1937(昭和12)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,841 字 · 49 页
……この何れにも、何となく、不合理に感ぜられるところがございましょう。しかし、
(は)の、動物の使用――と、いうことに考え及びますとき、私は愕然とし、思わず、五体の緊張するを憶えたのでございます。しかし、それは、犯人が動物を使用して、計画した殺人事件、と考えついたからではございませぬ。いつか師匠から承りました、岩井半四郎が、駒下駄を投げつけて殺したという、小猿のことを思い出したからでございます。その時、親猿は、悲しげに鳴きさけびながら、怒の形相物凄く、半四郎を、きっ、と睨みつけていた、というではございませぬか。――そうすれば、あの親猿が、畜生ながらにも、機会を得て、工み、そして、決行した殺人事件ではございますまいか。
私の、こうした推理は、もちろん、物的な証拠によるものではございませぬ。しかし、この、あまりにも因果的とも考えられる、謎の解決にも、決して、根拠のないことではございませぬ。――あの芝居小屋附近の、さるお茶屋に飼ってあった、年へた猿が、殺人事件の当日に逃げたまま行方不明になっているのでございます。こうした事実と、あの殺人の情況とを考えますとき、私のそうした推察も、決して、夢幻的ではない――と考えられないでございましょうか。