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じんたいかいぼうをみるのき
人体解剖を看るの記
海野 十三
「シュピオ」1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,432 字 · 17 页
もしあの少年が仮死であって、医師が執刀すると同時に、キャーッとか叫んで立ちあがったとしたら、どうだろう。そう思った瞬間、僕の身体の重心が、どこか身体の外に移ってゆくような気がした。
医師はピカピカ光る解剖の器械をことごとく揃えた。彼は立ち直って、解剖の屍体に近づいた。室内は俄かにザワついた。
医師はピンセットの大きいのを右手にもって、屍体の顔をジッと見た。それから屍体の瞼をピンセットの尖でつまみ、皮をクルリと上にまくって、眼球をしらべた。右の眼も、左の眼もそうした。
それから同じくピンセットを使って、鼻孔や口の中を調べていた――ように記憶する。記憶するというのは、ちょっと申訳がないが、実はいよいよたいへんなことが始まったぞというので、僕の胆玉は上がったり下ったりして、現場を逃げだそうかどうしようかと思案に暮れていたときなので、その辺はハッキリ覚えていないのである。只、あれが生きている人間だったら、さぞ痛いことだろうと思ったことである。
それから医師は、ピンセットの尖で、全身に渡って皮膚を軽くおさえながら、熱心に観察をした。目の孔も調べたようだ。
それがすむと、傍に向って、手をあげた。