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じんぶつはにわのめ
人物埴輪の眼
和辻 哲郎
「世界」1956(昭和31)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,170 字 · 7 页
しかるにこの眼は、そういう形づけを受けず、そばで見れば粗雑に裏までくり抜いた空洞の穴に過ぎないのであるが遠のけば遠のくほどその粗雑さが見えなくなり、魂の窓としての眼の働きが表面へ出てくる。それが異様な生気を現わしてくるゆえんなのである。眼にそういう働きが現われれば、顔面は生気を帯び、埴輪人形全体が生きてくるのはもちろんである。古墳時代の人々はそういうふうにして埴輪の人形を見、またそういうふうに見えるものとして埴輪の人形を作ったのであった。
こう考えてくると埴輪の人形の持っているあの不思議な生気のなぞが解けるかと思う。埴輪人形の製作者は人体を写実的に作ろうとしたのではない。ただ意味ある形を作ろうとしただけである。しかし意味ある形のうちの最も重要なものが人の顔面であったがゆえに、ああいう埴輪の人形ができあがったのである。その造形の技術はいかにも稚拙であるが、しかし「人」を顔面によって捕えようとする態度は、技術と同じに稚拙とはいえない。技術を学び取れば、それに乗って急にあふれ出ることのできるようなものが、その背後にある、と私は感ぜざるを得ない。従って、これらの稚拙な埴輪人形を作っていた民族が、わずかに一、二世紀の後に、彫刻として全く段違いの推古仏を作り得るに至ったことは、私にはさほど不思議とは思えないのである