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じんせいみっつのたのしみ
人生三つの愉しみ
「新潮 第四八巻第四号」1951(昭和26)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,953 字 · 16 页
そのムシロの湯気で石室内がモウモウとなった時に、人々はムシロの上へねて蒸気浴をするのだそうだ。この石ブロの多くは人家を遠く離れた無人の地にあり、五月から十月までというようなシーズンがあって、そのシーズンに近在から人が集り、近所のバラックに寝泊りして石ブロへ通うのだそうだが、よほど古い時代の風俗を感じるのは私の気のせいかしらん。奈良の般若坂に北山十八間という国宝建造物があり、癩者救済用の病院だった由、目下は戦災者の宿のない人たちがいつの間にやらこの千年前の癩病院へ何十世帯も住みついて動かなくなっているそうであるが、ここにも、病人のために造ったものらしい蒸風呂の跡を見ることができるそうである。
田舎の湯治場の風俗は、又、石ブロとほぼ相似た風俗で、一家族で一部屋をかり、自炊して湯治する。又、農村ではモライブロという風俗があり、いわば一ツの隣組で、代り番に自宅で風呂をたいて共同で浴する。必ずしも経済のためではなく、石ブロや湯治場同様、フロをもって休養時の集会所、社交場とみる遺風の片鱗ではあるまいか。
だいたい、どこの原始宗教でも、男女神交遊の伝説、オミキ、沐浴の三ツは附き物である。