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じんせいせいかいいん
人生正会員
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,238 字 · 23 页
「それは数理的にはそうでしょうけれど、時間的には一夫一妻です」
「いや、時間的にも一夫多妻だ。基督信者は来世を信じるんだろう?」
「無論です。死ねば天国へ行くんですから」
「来世は現世の延長だ。既に妻が天国で待っている。その上にもう一人貰えば、結局、天国へ行って一夫二妻になる」
「理窟はそうでしょうけれど」
「事実もそうだよ。一プラス一は二だ」
「成程」
僕はもう争うべきでないと思った。議論をして御機嫌に逆らう必要はない。再婚問題に関する社長の意向が分れば宜いのだ。
「すると何だな。君は尚子さんに間違があれば再婚する気だな」
「いや、僕は社長の模範に倣って独身を守ります」
「模範も何もない。それが本当だ」
「はあ」
「家へ帰って尚子さんに誓い給え。仮りにあなたに間違があっても一生独身で暮しますからって」
「そう申します。尚子の奴、僕の手を取って喜ぶでしょう」
「君のところはいつも春風駘蕩のようだが、子供のないのが玉に疵だな」
「仲が好過ぎるからでしょう」
「こら! 直ぐそう調子づく」
と社長は猿臂を伸した。僕はもう少しで数珠で打たれるところだった。何うも仏教が荒行になって来ると思った。