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じんぞうにんげんじけん
人造人間事件
海野 十三
「オール読物」文藝春秋、1936(昭和11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,654 字 · 30 页
雁金検事のオーバーと、大江山課長の制帽とが、白布を蔽った空寝台の上に並べて置かれた。それは竹田博士の死体と同じ位置に置かれたことはいうまでもない。一行はこれから何事が起るかと、唾をのんで、帆村の一挙一動に目をとめた。
「さて――これから、ラジオドラマの台本を読んでゆきます。なにごとが起っても、どうかお愕きにならぬように」
そういって彼は、部屋の真中に突立って、大声で読みあげていった。見ていると彼はそれを函の中の人造人間に読み聞かせている様であった。然し鋼鉄人間はピクンとも動かない。
帆村はジェスチュア交りで、一語一句をハッキリ読みあげていった。彼は昔、脚本朗読会に加わっていたことがあったとかで、なかなかうまいものだった。
一座はシーンとして、東京が敵国の爆撃機隊に襲撃されるくだりを聞き惚れていた。すると第一場第二場は終って、次に第三場を迎えた。それは太平洋上に於ける両国艦隊の決戦の場面であった。
「太平洋上、決戦ハ迫ル――」と帆村は高らかに叫んだ。
「西風ガ一トキワ強クナッテキタ――」
と地の文章を読む。これは昨夜、千葉早智子がたいへん気取って読んだところだ。