轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

にんげんしっかく

人間失格

太宰 治

一个连笑脸都让人毛骨悚然的男人,从童年起就活得像场表演。翻开这本自白,你会看到最深处的孤独和挣扎。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,014 字 · 141 页

青空文庫

「ここの二階に、置いてもらえなかったら、働いて、……」

「本気で、そんな事を言っているのですか? いまのこの世の中に、たとい帝国大学校を出たって、……」

「いいえ、サラリイマンになるんでは無いんです」

「それじゃ、何です」

「画家です」

思い切って、それを言いました。

「へええ?」

自分は、その時の、頸をちぢめて笑ったヒラメの顔の、いかにもずるそうな影を忘れる事が出来ません。軽蔑の影にも似て、それとも違い、世の中を海にたとえると、その海の千尋の深さの箇所に、そんな奇妙な影がたゆとうていそうで、何か、おとなの生活の奥底をチラと覗かせたような笑いでした。

そんな事では話にも何もならぬ、ちっとも気持がしっかりしていない、考えなさい、今夜一晩まじめに考えてみなさい、と言われ、自分は追われるように二階に上って、寝ても、別に何の考えも浮びませんでした。そうして、あけがたになり、ヒラメの家から逃げました。

夕方、間違いなく帰ります。左記の友人の許へ、将来の方針に就いて相談に行って来るのですから、御心配無く。ほんとうに。

と、用箋に鉛筆で大きく書き、それから、浅草の堀木正雄の住所姓名を記して、こっそり、ヒラメの家を出ました。