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にんげんさんすいずまき

人間山水図巻

吉川 英治

「東京 創刊号」1947(昭和22)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,343 字 · 21 页

青空文庫

――が、いまその非を覚った彼は、その日から師の李唐の側につきっきりで侍いた。朝夕は水を担い薪を割り、また師の絵を携えて里に行っては、絵を食物に換えて帰った。

ふたつの道は歩けなかった。彼は山寨を解散した。手下たちも、蕭照がつき当った道にいちどは途方にくれたが、蕭照がひと晩じゅう膝ぐみになって、噛んでふくめるように話したことを彼等もどうやら理解して、幾年か後には鳥獣の世間でない人なかの世間に於いて、おたがいに明るい話題を持って会おうじゃないかと約束して散々に分れた。

冬も、小堂の師弟は、この山中に一穂の灯を点じ雪のふる夜も画道に精進していた。

それからの師弟の足蹟は、数年間、分らなかった。

南宋となってから世も暫く小康がつづいた。天下の名画を蒐めた徽宗の宣和御府の儲蔵も、往年の乱で大部分は散逸したが、臨安の新都には、中興館閣儲蔵の制がふたたび設けられた。また宣和画院にならっての画院制も復興された。

北宋の代にまさる芸術の華が、ふたたび南宋の御府に研を競わんとする風を示した。が、それはやはり民衆の生活とその繁栄とは縁もなく発達してゆきそうであった。