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にんげんさんすいずまき
人間山水図巻
吉川 英治
「東京 創刊号」1947(昭和22)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,343 字 · 21 页
北宋の朝は、歴史では、金に敗れたとなるだろうが、実は疾くに自分自体で敗れていたのさ。遠い前の、唐、晋、後漢、前漢、秦、周――の前例どおりさ。よくも人間てやつは分りきったことを次から次へくり返しているものだ』
『まったく、諸国から出た皇帝が立ち皇帝に亡ぼされ、そのたびに何億という人民の膏血で築かれた皇城が一夜の灰燼になってしまっている』
『年号ばかり、建炎と革めても、金の皇帝がまたそれをやれば、同じ轍をくりかえすに決っている。ただ長いか短いかだけだ』
『いくら精鋭な衛林の軍と高い城壁で守ってもだめかね』
『そんな事に力を入れれば入れるほど滅亡の日を確約するだけのことさ。なぜならばそれは皆、人民の犠牲によらなければできない事だ。しかもその中には、自然天下の財宝をあつめ、逸楽と権勢だけに生きようとする人間ばかりを保護する制度ができてしまう』
『が、朝威を振わなければ、人民が伏すまいし』
『それが崩壊の因だよ。この世で形あるもので滅しないものって何一つあるか。あるとすれば、形の無きものでなければならない。だから出来ない相談みたいなものだが、不易ならんとすれば、人皇の左右へ、財宝なんぞ置いてはいけないのだ。