轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
にんげんいす
人間椅子
江戸川 乱歩
「苦楽」プラトン社、1925(大正14)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,920 字 · 30 页
それでは凡てが駄目になって了うばかりか、私は、恐ろしい罪名を着て、法律上の刑罰をさえ受けなければなりません。
そこで、私は、せめて夫人に、私の椅子を、この上にも居心地よく感じさせ、それに愛着を起させようと努めました。芸術家である彼女は、きっと常人以上の、微妙な感覚を備えているに相違ありません。若しも、彼女が、私の椅子に生命を感じて呉れたなら、ただの物質としてではなく、一つの生きものとして愛着を覚えてくれたなら、それ丈けでも、私は十分満足なのでございます。
私は、彼女が私の上に身を投げた時には、出来る丈けフーワリと優しく受ける様に心掛けました。彼女が私の上で疲れた時分には、分らぬ程にソロソロと膝を動かして、彼女の身体の位置を換える様に致しました。そして、彼女が、うとうとと、居眠りを始める様な場合には、私は、極く極く幽に、膝をゆすって、揺籃の役目を勤めたことでございます。
その心遣りが報いられたのか、それとも、単に私の気の迷いか、近頃では、夫人は、何となく私の椅子を愛している様に思われます。彼女は、丁度嬰児が母親の懐に抱かれる時の様な、又は、処女が恋人の抱擁に応じる時の様な、甘い優しさを以て私の椅子に身を沈めます。