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にんげんいす

人間椅子

江戸川 乱歩

「苦楽」プラトン社、1925(大正14)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,920 字 · 30 页

青空文庫

「オオ、気味の悪い」

彼女は、背中から冷水をあびせられた様な、悪寒を覚えた。そして、いつまでたっても、不思議な身震いがやまなかった。

彼女は、あまりのことに、ボンヤリして了って、これをどう処置すべきか、まるで見当がつかぬのであった。椅子を調べて見る(?)どうしてどうして、そんな気味の悪いことが出来るものか。そこには仮令、もう人間がいなくても、食物その他の、彼に附属した汚いものが、まだ残されているに相違ないのだ。

「奥様、お手紙でございます」

ハッとして、振り向くと、それは、一人の女中が、今届いたらしい封書を持て来たのだった。

佳子は、無意識にそれを受取って、開封しようとしたが、ふと、その上書を見ると、彼女は、思わずその手紙を取りおとした程も、ひどい驚きに打たれた。そこには、さっきの無気味な手紙と寸分違わぬ筆癖をもって、彼女の名宛が書かれてあったのだ。

彼女は、長い間、それを開封しようか、しまいかと迷っていた。が、とうとう、最後にそれを破って、ビクビクしながら、中身を読んで行った。手紙はごく短いものであったけれど、そこには、彼女を、もう一度ハッとさせた様な、奇妙な文言が記されていた。