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にんげんいす
人間椅子
江戸川 乱歩
「苦楽」プラトン社、1925(大正14)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,920 字 · 30 页
私という男は、何と因果な生れつきなのでありましょう。そんな醜い容貌を持ちながら、胸の中では、人知れず、世にも烈しい情熱を、燃していたのでございます。私は、お化のような顔をした、その上極く貧乏な、一職人に過ぎない私の現実を忘れて、身の程知らぬ、甘美な、贅沢な、種々様々の「夢」にあこがれていたのでございます。
私が若し、もっと豊な家に生れていましたなら、金銭の力によって、色々の遊戯に耽けり、醜貌のやるせなさを、まぎらすことが出来たでもありましょう。それとも又、私に、もっと芸術的な天分が、与えられていましたなら、例えば美しい詩歌によって、此世の味気なさを、忘れることが出来たでもありましょう。併し、不幸な私は、何れの恵みにも浴することが出来ず、哀れな、一家具職人の子として、親譲りの仕事によって、其日其日の暮しを、立てて行く外はないのでございました。
私の専門は、様々の椅子を作ることでありました。私の作った椅子は、どんな難しい註文主にも、きっと気に入るというので、商会でも、私には特別に目をかけて、仕事も、上物ばかりを、廻して呉れて居りました。そんな上物になりますと、凭れや肘掛けの彫りものに、色々むずかしい註文があったり、クッションの工合、各部の寸法などに、微妙な好みがあったりして、それを作る者には、一寸素人の想像