轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
にんげんはんえい
人間繁栄
豊島 与志雄
「改造」1924(大正13)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,038 字 · 38 页
彼はこの上二人の話を聞くのが悪いような気がして、吸い残しの五六本はいってる敷島の袋とマッチとを、銀杏返の女に与えて通り過ぎた。
「……親切なお客さん。」
尻上りの調子で束髪の女が云ったらしい言葉が、後ろから追っかけてきたので、彼はふと振向いてみたが、急に顔が赤くなるのを覚えて、すたすたと足を早めた。そして宿に帰ってすぐに寝た。
それだけのことが、自殺の決心をしていた彼の悲痛な心へ、変に生温くからみついてきた。彼は翌朝、伊豆の方へ向って出発した。前夜二人の女が足を投げ出して坐っていた所には、冷かな朝風が颯々と吹き過ぎていた。
彼は伊豆の温泉に四五日滞在した後、自殺の決心を飜して、急いで東京に戻ってきた。
それから数ヶ月の間、津田洋造は花柳の巷へ屡々出入したが、大学卒業後半年ばかりにして結婚する時から、それをぴたりと止してしまった。その代りに、媒妁人へ向って次の条件を持ち出した。
「私は結婚後は決して遊里へ足を踏み入れはしません。けれども、他に女を――素人の女をかこっておいて、子供を産ませるようなことはあるかも知れません。そのことを承知の上で、そして生れた子供は自分の子として入籍するのを承知なら、すぐにでも結婚しましょう。