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ひとだまのひとつのばあい
人魂の一つの場合
寺田 寅彦
「帝国大学新聞」1933(昭和8)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,928 字 · 6 页
それでこの一編はもちろん学術的論文でもなんでもなくて、ただの随筆に過ぎないのであるが、だれかがこの中からちゃんとした論文の種を拾い上げ培養して花を咲かせるという事についてはなんの妨げもないであろう。
それはとにかく、われわれの子供の時分には、火の玉、人魂などをひどく尊敬したものであるが、今の子供らはいっこうに見くびってしまってこわがらない。そういうものをこわがらない子供らを少しかわいそうなような気もするのである。こわいものをたくさんにもつ人は幸福だと思うからである。こわいもののない世の中をさびしく思うからである。
(昭和八年十一月、帝国大学新聞)