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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

不平そうにあやめは立ち上ったが、開けられてある障子の間から、縁側や裏庭が見え、卯の花が雪のように咲いている、垣根を越して麦や野菜の、広々とした青い畑が、数十町も展開けて見えた。

(何だろう? 人だかりがしているよ)

あやめは縁側へ出て行って、畑の中の野道の上に、十数人の男女が集まっているのへ、不思議そうに視線を投げた。

しかし距離が大分遠かったので、野道が白地の帯のように見え、人の姿が蟻のように見えるだけであった。

そこであやめは眼を移し、はるかあなたの野の涯に、起伏している小山や谷を背に、林のような木立に囲まれ、宏大な屋敷の立っているのを見た。

あやめにとっては実家であり、不思議と怪奇と神秘と伝説とで、有名な荏原屋敷であった。

あやめはしばらくその荏原屋敷を、憧憬と憎悪とのいりまじった眼で、まじろぎもせず眺めていたが、野道の上の人だかりが、にわかに動揺を起こしたので、慌ててその方へ眼をやった。

怪老人の魔法

野道の上に立っているのは、例の「飛加藤の亜流」と呼ばれた、白髪白髯の老人と、昼も点っている龕燈を持った珠玉のように美しい少年とであり、百姓、子守娘、旅人、行商人、托鉢僧などがその二人を、面白そうに囲繞いていた。