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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

と、その独楽を睨みながら、障子の外の縁側の方へ、生垣の裾から這い寄って来る、蟇のような男があった。三下悪党の勘兵衛であった。

二つ目の独楽を持って

田安屋敷の乱闘の際に、あやめによって独楽の紐で、首を締められ一旦は死んだが、再び業強く生き返り、勘兵衛はその翌日からピンシャンしていた。

そうして今日は頼母のお供をし、頼母の弟の主馬之進の家へ、――向こうに見える荏原屋敷へ来た。その途中で見かけたのが、野道での人だかりであった。そこで自分だけ引返して来て、群集に雑って魔法を見ていた。と、老人の小太い杖で、首根っ子をしたたか撲られた。息の止まりそうなその痛さ! 無我夢中で逃げて来ると、百姓家が立っていた。水でも貰おうと入り込んでみると、意外にも主税とあやめとが、艶な模様を描いているではないか。

淀屋の独楽さえ置いてある。

(凄いような獲物だ)と勘兵衛は思った。

(独楽を引っ攫って荏原屋敷へ駆けつけ、頼母様へ献上してやろう)

勘兵衛はこう心を定めると、ソロリソロリと縁側の方へ、身をしずかに這い寄せて行った。

まだ痛む首根っ子を片手で抑え、別の片手を縁のふちへかけ、開いている障子の隙間から、部屋の中を窺っている勘兵衛の姿は、迫って来る宵闇の微光の中で、まこと大きな蟇のように見えた。