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かたきうちきょうだいがさ
仇討姉妹笠
国枝 史郎
「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页
「あれッ」とさすがに驚いて、お八重は悲鳴をあげ飛び上ったが、そのお八重の足許の地面へ、お八重の肩から飛び下りた物が、赤いちゃんちゃんこを着た小猿だったので、お八重は驚きを繰り返して叫んだ。
「まア、お前は藤八じゃアないかえ!」
さよう、それはお葉の飼猿、お八重もよく知っている藤八猿であった。
奇怪な邂逅
藤八猿が居るからには、持主のお葉がいなければならない。――とお八重はそう思った。お葉に逢って訊ねたならば、恋人主税のその後の消息を、耳にすることが出来るかもしれない。――
(このお屋敷の土塀を越して、藤八猿は来たはずだった!)
裾にまつわる藤八猿を、自由に裾にまつわらせながら、お八重は荏原屋敷の土塀を見上げた。土塀を高くぬきん出て、繁った植込の枝や葉が建物の姿を隠している。
(人声や物音がするようだが?)
(何か間違いでも起こったのかしら?)
(それとも妾の空耳かしら?)
なおもお八重は聞き澄ました。物音は間断なく聞こえてくる。
主税の消息を知っているお葉が、居るかもしれない屋敷の構内から、不穏な物音の聞こえるということは、お八重にとっては心配であった。
(妾、屋敷内へ入って行ってみようか?)