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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

「黙れ!」と主税は一喝した。

「黙っておればこやつ無礼! 拙者を誘拐しか何かのように……」

「おお誘拐しだとも、誘拐しでなくて何だ! あやめの阿魔を誘拐して、彼女の持っている秘密を奪い、一儲けしようとするのだろう! ……が、そうならお気の毒だ! 彼女はそんな秘密などより、荏原屋敷の奴原を……」

「荏原屋敷だと※(感嘆符疑問符、1-8-78) おおその荏原屋敷とは……」

「そうれ、そうれ、そうれどうだ! 荏原屋敷まで知っている汝、どうでも平記帳面の侍じゃアねえ! 食わせ者だア――食わせものだア――ッ……わーッ」

と、これはどうしたことだろう。にわかに勘兵衛は悲鳴を上げ、両手で咽喉の辺りを掻き※(「てへん+毟」、第4水準2-78-12)ったかと思うと、前のめりにバッタリと地へ倒れた。

「どうした勘兵衛!」と主税は驚き、介抱しようとして屈み込んだ。

その主税の眼の前の地上を、小蛇らしいものが一蜒りしたが、空店の雨戸の隙の方へ消えた。

息絶えたらしい勘兵衛の体は、もう延びたまま動かなかった。

「どうしたどうした!」

「勘兵衛の声だったぞ」と小屋の中から人声がし、幾人かの人間がドヤドヤと、木戸口の方へ来るらしかった。