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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

その中あやめは縁があって、江戸の両国へ出ることになった。

そこで浪速から江戸へ来た。するとどうだろう飛田林覚兵衛も、江戸へ追っかけて来たではないか。

こうして昨日の昼席となった。

舞台で孕独楽を使っていると、間近の桟敷で美貌の若武士が――すなわち山岸主税なのであるが、熱心に芸当を見物していた。ところが同じその桟敷に、飛田林覚兵衛もいて、いかにも子独楽が欲しそうに、眼を据えて見物していた。

(可愛らしいお方)と主税に対しては思い、(小面憎い奴)と覚兵衛に対しては感じ、この二つの心持から、あやめは悪戯をしてしまったのである。即ち舞台から例の小独楽を、見事に覚兵衛の眼を掠め、主税の袖の中へ投げ込んだのである。

(孕独楽が後家独楽になろうとままよ、妾にはあんな子独楽用はない。……これで本当にサバサバしてしまった)

あやめはそう思ったことであった。

そうして彼女は今日の昼席から、定席へも出演ないことに決心し、宿所をさえ出て行方を眩ましてしまった。それは彼女にとっては一生の大事業を、決行することに心を定め、その準備に取りかかったからであった。

でも彼女は夕方になった時、職場が恋しくなって来た。