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かたきうちきょうだいがさ
仇討姉妹笠
国枝 史郎
「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页
そうしてようやく目的を達し、淀屋の独楽を奪い取ったら、すぐに他人に奪い返されてしまった。何と云ったらいいだろう!)
代々の将軍家から田安家へ賜わった、数々の器類を奪ったのも、目的の一つには相違なかったが、真の目的はそれではなくて、淀屋の独楽を奪うことであった。
彼女は田安家へ入り込むや否や、淀屋の独楽の在場所を探した。と、教えられてきた淀屋の独楽と、そっくりの型の独楽を奥方妙子様が、ご秘蔵なされていることを知った。しかし一つだけ不思議なことには、その独楽は淀屋の独楽と違って、いくら廻しても独楽の面へ、一つとして文字を現わさなかった。
「では淀屋の独楽ではないのだろう」と思って、お八重は奪うことを躊躇した。ところが此頃になって老女の一人が「あの独楽は以前には廻す毎に、文字を現わしたものでございますが、いつの間にやらその事がなくなって、この頃ではどのように廻したところで、文字など一字も現われません」と話した。
「ではやはり奥方様お持ちの独楽は、淀屋の独楽に相違ない」とそうお八重は見極めをつけ、とうとうその独楽を昨日奪って、折柄塀外へ来たお葉の手へ、投げて素早く渡したのであった。