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かたきうちきょうだいがさ
仇討姉妹笠
国枝 史郎
「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页
女は? 浪速あやめであった。鼠小紋の小袖に小柳襦子の帯、お高祖頭巾をかむったあやめであった。
それにしてもあやめはほんの先刻まで、女猿廻しお葉として、老人主従と連れ立ってい、そうしてつい今しがた同じ姿で、土塀を乗り越えてこの構内へ、潜入をしたはずだのに、今見れば町家の女房風の、浪速あやめとしてここにいるとは?
短かい短かい時間の間に、あるいは女猿廻しお葉となり、あるいは曲独楽使いのあやめとなる! この女の本性は何なのであろう?
正体不可解の浪速あやめは、石橋の袖に佇みながら、頭巾と肩とをわけても鮮かに、月の光に曝しながら、正面に見えている建物の方を、まじろぎもせず眺めていたが、やがてその方へ歩き出した。
と、築山の裾を巡った。
とたんに彼女は「あッ」と叫んで、居縮んだように佇んだ。同時に彼女の正面からも、同じような「あッ」という声が聞こえた。見ればそこにも女がいて、あやめの顔を見詰めながら、居縮んだように立っている。それは女猿廻しのお葉であった。
おお、では二人のこの女は、別々の女であるのだろうか! そうとしか思われない。
それにしても何と二人の女は、その顔立から肉付から、年恰好から同一なのであろう! そうして何とこの二人は、経歴から目的から同一なのであろう! 二人の女の関係はどうなのであろう?