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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

すると、そこへ二人の武士が来た。やにわに一人を斬り伏せて、お八重を抱え廊下を走り、雨戸を蹴破り庭へ出た。

そういう山岸主税であった。

すぐに月光が二人を照らした。その月光の蒼白いなかに、二つの女の人影があったが、

「山岸様!」

「お八重様!」

と、同時に叫んで走り寄って来た。

「あッ、そなたはあやめ殿!」

「まあまああなたはお葉様か!」

主税とお八重とは驚いて叫んだ。

「事情は後から……今は遁れて! ……こっちへこっちへ!」と叫びながら、あやめは門の方へ先頭に立って走った。

後につづいて一同も走った。開けられてある門を出れば、田安家お屋敷の廓内であった。

木立をくぐり建物を巡り、廓の外へ出ようものと、男女四人はひた走った。するとその時背後から、追い迫って来る数人の足音が聞こえた。

(一人二人叩っ斬ってやろう)

今まで苦しめられた鬱忿と、女たちを逃がしてやる手段としても、そうしなければなるまいと主税は咄嗟に決心した。

「拙者にかまわず三人には、早く土塀を乗り越えて、屋敷より外へお出でなされ。……拙者は彼奴らを一人二人! ……」

云いすてると主税は引っ返した。

「それでは妾も!」