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こんにちのぶんがくとぶんがくしょう

今日の文学と文学賞

宮本 百合子

「懸賞界」1939(昭和14)年8月下旬号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,254 字 · 9 页

青空文庫

文化、文芸賞の数の多いことでは、今日、日本が第一位にあるのではないかと思われる。今度出版される昭和十四年度の『雑誌年鑑』の見本の一隅に、文化、文芸賞要覧というのがあって、そこを見たら帝国学士院賞や文化勲章までを入れて凡そ二十二種の賞の名が並んでいた。数の上では文運隆盛の趣を示しているかのようである。

一体、日本の現代文学の分野で、これだけあまたの賞というものはいつ頃、どのような社会の事情、文学の機運によって生れて来たものであろうか。文学に関する賞についてだけ考えて見ると、これらの賞が、明治から大正年代にかけてはまだ殆どなかったという事実に思い当る。明治三十七八年以後大正十年位までの間は、日本の近代文学が、その創造力の旺盛をきわめた時期であった。今日私たちの目の前にある近代古典と云うべき作品の多くはこれらの時期に書かれたものであるし、古典的な権威として今日或る意味で価値ある文学上の存在をつづけている作家たち、例えば島崎藤村、徳田秋声、谷崎潤一郎、永井荷風、志賀直哉、武者小路実篤等は、いずれもこの年代に、壮年期の活動を示した人々であった。過去の文学の上にも、戦争は甚大に影響している。