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こんにちのぶんがくとぶんがくしょう

今日の文学と文学賞

宮本 百合子

「懸賞界」1939(昭和14)年8月下旬号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,254 字 · 9 页

青空文庫

さえ出版出来なかったような有様に比べて、今日の小説の隆盛はどうであろう。農民文学懇話会、大陸文学懇話会、生産文学、都会文学懇話会というものまでも、故小橋市長によってもくろまれた。芥川、池谷、千葉賞のように、故人となった文学者の記念のための文学賞ばかりか、農民文学には有馬賞というのがあり、中河与一氏の尽力によって成立してその第一回受賞者は中河氏であった、大倉出資の透谷賞というのもあるようになった。

今度の事変が、戦争として到達している複雑な性質は、日露戦争時代のような素朴さをふりすてて、文化、文学の面にも深刻に波及している。諸生産が統制のもとになされつつあることは、作品をその生産物としてもっている文学の領域にも無関係ではあり得ない。官民一致の体制は、文学の賞の本質にも十分に反映している。このことは、現実生活の中では、文部省の教科書取締りにあらわれた、文学の読みかたの、特殊な標準とも関連しているから、各種目の長篇小説の未曾有の氾濫状態の一面に、おのずと、文学とは何であろうかという、文学にとって最も核心にふれた反省が、一般の人の心のうちに擡頭しつつある。